心不全の進行度や症状に応じて行う、薬以外の治療
心不全の治療では、患者さんの状態に合わせて、機械を使った治療や手術を行う場合があります。
心不全の治療では、病気の進行度合いや症状に合わせて、機械を使った治療や手術(非薬物療法)を行う場合があります。
非薬物療法を行う場合は、薬物療法と組み合わせて行うことが一般的1)で、併用することで予後の改善(より長く生きられる)や症状の軽減が期待できます2-6)。
ペースメーカ
脈拍の遅い患者さんに対して使う機械で、電気刺激を心臓に送ってリズムを整えます。
カテーテルアブレーション
カテーテルという細い管を血管から心臓に入れて、不整脈の原因となっている部分を高周波電流で小さく焼き切って治療する方法です。
植込み型除細動器(ICD)
命に関わる不整脈を感知して突然死を防ぐ、体内植込み型装置です。常に心臓の脈を監視し、命に関わる不整脈が起こったときに電気刺激を心臓に送って治療します。
心臓再同期療法(CRT)
心臓のポンプ機能に障害がある患者さんに対する治療法です。ペースメーカを植え込んで心臓の収縮のタイミングのズレを調節することで、心臓のポンプ機能を改善します。
心臓の血管(冠動脈)が狭くなって、心臓に十分な血液が送られない状態になっている場合、手術を行うことがあります。
心臓カテーテル治療
カテーテルを挿入し、カテーテルの先端に取り付けた風船を膨らませて、狭くなった血管を拡げる手術です。再び狭くならないように、ステントという器具で血管を内側から補強するのが一般的です。
冠動脈バイパス術
冠動脈の狭くなった部分を避けて迂回路(バイパス)をつくる手術です。体の別の部分から取り出した血管を縫い合わせて、新たな血液の通り道をつくります。
心臓の血流を仕切る弁のはたらきが悪くなった患者さんに対しては、人工弁に置き換える手術(弁置換術)や、弁を残して修復する手術(弁形成術)を行います。
通常は開胸手術ですが、カテーテルを使って、開胸せずに人工弁を入れる方法もあります。
CPAP(持続的陽圧呼吸)やASV(適応補助換気)という方法があります。呼吸を補助することで、肺のうっ血(血液がたまった状態)を改善したり、心臓の負担を軽くしたり、交感神経のはたらきをおさえたりする作用があります。
心臓のポンプ機能を助ける装置です。体内植込み型と体外設置型があり、どちらも開胸手術でとりつけます。開胸せずにカテーテルを使って心臓の中にとめ置くタイプもあります。
日本では現在、体内植込み型は心臓移植の待機期間中に、体外設置型は病院内で使われています。
ほかの治療法では救命・延命が期待できないほど重症な心不全患者さんの場合、心臓移植が行われることがあります。年齢は65歳未満が望ましいとされています。
【参考】
一般社団法人 日本循環器学会/ 日本心不全学会:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版). p47
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/06/JCS2017_tsutsui_d.pdf(2022年10月20日閲覧)
Cleland JG, et al.: N Engl J Med. 352(15), 1539-1549, 2005
Linde C, et al.: J Am Coll Cardiol. 52(23), 1834-1843, 2008
Carbucicchio C, et al.: Circulation. 117(4), 462-469, 2008
Hayashi M, et al.: Europace. 16(1), 92-100, 2014
Rose EA, et al.: N Engl J Med. 345(20), 1435-1443, 2001
一般社団法人 日本心不全学会:心不全手帳(第2版). 2018
http://www.asas.or.jp/jhfs/pdf/techo_book_new1_katamen.pdf(2020年3月25日閲覧)
一般社団法人 日本循環器学会/ 日本心不全学会:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版). p61
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/06/JCS2017_tsutsui_d.pdf(2022年10月20日閲覧)
一般社団法人 日本循環器学会/ 日本心不全学会:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版). p49-50
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/06/JCS2017_tsutsui_d.pdf(2022年10月20日閲覧)
一般社団法人 日本循環器学会/ 日本心不全学会:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版). p99-102
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/06/JCS2017_tsutsui_d.pdf(2022年10月20日閲覧)
一般社団法人 日本循環器学会/ 日本心不全学会:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版). p102-103
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/06/JCS2017_tsutsui_d.pdf(2022年10月20日閲覧)
POINT
心不全の進行度合いや症状に合わせて、
薬以外での治療を行うことがあります。
心不全の治療での進行度や症状に応じて行う機械を使用した治療や手術(非薬物療法)について、不整脈、冠動脈疾患、弁膜症、呼吸補助治療、補助人工心臓(VAD)、心臓移植の症状別にそれぞれの治療法をご紹介しています。