健康的な生活習慣を継続することの大切さと注意点

運動/食事療法について

心不全の発症、進行、再発の予防のためには、適切な治療に加えて、運動、食事などの生活習慣の改善が必要です1)

運動の効果

  • 体力の向上や筋力の維持に効果的です2)
  • 心不全の原因となる心臓への負担の軽減につながります2)
  • 心不全による再入院率や死亡率の減少が報告されています3)

あなたがこれから運動を始めるのならば、息ぎれせず、会話をしながらでもできる程度の、ウォーキングや軽いエアロビクスなどの運動を1日5~10分程度から行うとよいでしょう2)

ながら運動のすすめ

運動が苦手な方や、これまでこれといった運動を行ってこなかった方は、日常生活のなかに運動を取り入れる「ながら運動」をおすすめします。あなたの日常生活のなかでできることをみつけ、ぜひ取り入れてみましょう。

歯を磨きながらの運動

歯を磨きながらの運動
  • 歯ブラシを持つ肘を肩の高さまで上げます
  • そのままの姿勢をキープし、肩の筋肉を鍛えます
  • ストレッチする側の膝を伸ばした状態のままで、体の後ろ側に足を引いていきます。ストレッチする側の膝は曲げずにアキレス腱を伸ばします

洗濯物を干しながらの運動

洗濯物を干しながらの運動
  • 足を肩幅に広げて、背筋を伸ばします
  • 両腕を使って上半身をひねりながら、
    洗濯物を干します
  • 繰り返し行い、上半身を鍛えます

座りながらの運動1

座りながらの運動1
  • 手で頭を持ち、真横に倒して、
    深呼吸しながら、ゆっくり10秒数えます
  • 反対側の頭も同様に倒して、首まわりの筋肉の緊張をほぐします

座りながらの運動2

座りながらの運動2
  • イスに浅く座り、足の裏を床につけて、
    両手を胸の前で交差します
  • 背中を丸めてあごを引き、おへそを見ながら、4秒かけてイスの背につけます
  • その姿勢のままで、4秒かけて元にもどり、腹筋を鍛えます(繰り返します)

洗い物をしながらの運動

洗い物をしながらの運動
  • 肩幅に足を広げて、背筋を伸ばして立ちます
  • かかとを5秒かけて上げて、
    5秒かけて元にもどします
  • 繰り返し行い、ふくらはぎを鍛えます

テレビを見ながらの運動

テレビを見ながらの運動
  • 足を肩幅に広げて、背筋を伸ばし、
    両腕を前に伸ばします
  • 3秒かけて腰を落とし、
    1秒間静止し、3秒かけて元にもどします
  • 15回1セットを1日2回行い、下半身を鍛えます
  • ひざはつま先より前に出ないようにします
  • ふらつくときは、イスの背につかまります

階段を昇り降りしながらの運動

階段を昇り降りをしながらの運動
  • ひざを高めに上げて、足の裏全体で階段を蹴ります
  • つま先からしっかり着地します
  • 階段を昇り降りして、下半身の筋肉を鍛えます
  • 階段を昇るのがきつい場合、
    降りるだけでも効果が期待できます

監修:聖マリアンナ医科大学 薬理学 准教授 木田 圭亮先生

運動をするときの注意2)

  • 無理なく安全に行うことが重要です。軽い運動から始めてゆっくり進めましょう。
  • 「息ぎれが強くなっている」「体重の増加や、むくみが増えた」ときは、運動を中止して担当医に相談しましょう。
  • 症状によっては運動を控えたほうがよい場合もあります。運動を始める前には担当医に相談しましょう。
  • 暑中や寒中での運動は控えましょう。
  • エクササイズを行う際は、換気の良い場所で、人との距離を2メートル以上取り、十分なスペースを確保した上で実施してください。

食事で気をつけたいポイント

バランスのよい食事を心がけましょう

「主食+主菜+副菜」が理想です。偏った食事にならないようにしましょう2)

バランスのよい食事を心がけましょう バランスのよい食事を心がけましょう

塩分を控えましょう

塩分を摂りすぎると、体の中に水分をため込みやすくなってしまいます。これが高血圧やむくみにつながり、結果的に心臓に負担をかけてしまいます2)。日本人の食塩摂取量は平均10.1g(男性11.0g、女性9.3g)で、年齢別でみると60歳代が最も塩分を摂っているという平成30年の国民生活基礎調査の報告があります4)

心不全の患者さんが目標とする食塩摂取量は「1日6g未満」です2)

最近は減塩レシピがさまざまなところで容易に入手できますし、塩味のきいた漬物よりも酢の物を選んだり、塩で味付けするよりも自然の味を生かして調理したりするなど、少し意識するだけでも日々の食事はきっと変わります。

心不全でない人でも、厚生労働省が推奨する1日の塩分摂取量は男性が7.5g未満、女性が6.5g未満5)ですので、ご自分だけ別の食事を用意するのではなく、ご家族と一緒に減塩に取り組むとよいでしょう。

【参考】

  1. 1)

    一般社団法人 日本循環器学会/ 日本心不全学会:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版). p32
    https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/06/JCS2017_tsutsui_d.pdf(2022年10月20日閲覧)

  2. 2)

    一般社団法人 日本心不全学会:心不全手帳(第3版),2022.
    http://www.asas.or.jp/jhfs/topics/files/shinhuzentecho/techo3_book1_katamen.pdf(2022年11月15日閲覧)

  3. 3)

    Piepoli MF, et al.: BMJ. 328(7433), 189, 2004

  4. 4)

    厚生労働省:平成30年国民健康・栄養調査報告(令和2年3月)
    https://www.mhlw.go.jp/content/000681200.pdf(2022年10月20日閲覧)

  5. 5)

    厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2020年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書
    https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf(2020年5月12日閲覧)

POINT

食事、運動における注意点を理解し、
心臓によりよい生活を送りましょう。

チェックシートで心臓の状態をまずは確認してみましょう

食事や運動をはじめとする生活習慣の見直しが心不全の発症や進行の予防に重要であること、心不全患者さんが食事や運動をする際の注意点、バランスのよい食事や適度な運動を無理なく続けていただくことの大切さなどについて、ご説明しています。